、挨拶《あいさつ》しているうちに、ふと目をあげると、そこに階段をおりて来る庸太郎と葉子の姿に気がついた。二人はぴったり肩を押しつけるようにして、爪先《つまさき》をそろえ、いくらかあらたまったような表情で、何か話しながらそろりそろりと降りて来た。庸三は見ては悪いものを見たような気持で、にわかに目をそらしたが、二人は多分気がつかずに、傍目もふらず彼のすぐ目の前をゆっくりゆっくり通って行った。
 大分たってから席へ復《かえ》ると、二人はもうそこにいて、
「どこへ行っていらして?」
 と葉子はきいた。
「私たち先生を捜していたのよ。ここへ還《かえ》ってみると、いらっしゃらないもんだから、方々捜しまわりましたわよ。」
「まあいい。」
「よかないわ。貴方《あなた》に不機嫌《ふきげん》になられて、ダンスを見る気分も壊れてしまったわ。だからお誘いしたら素直に来て下さるものよ。」
 葉子は目を潤《うる》ませたものだったが、その時分から見ると、退院後に起こった事件をも通りこして、二人の神経も大分荒くなっていた。今度は脚の運動のよく見える階上に席を取っていたが、幕間《まくあい》に庸三は、ふと下の廊下で傷心な
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