それは去年のことだったが、同じアメリカの舞踊団がやって来て、その時も庸三は庸太郎に前売切符を買わせて、座席を三人並べて観《み》たものだったが、新調のシャルムウズの羽織などを着込んだ葉子が一番奥の座席で、隣りが庸太郎、それから庸三という順序で、オーケストラ・ボックス間近に陣取っていた。開演にはまだ時間が早く、下も二階も座席が所々|疎《まば》らに塞《ふさ》がっているきりであった。黄昏《たそがれ》に似た薄暗さの底に、三人はしばらくプログラムを見ていたが、葉子は中に庸太郎という隔てのあるのを牴牾《もどか》しがるようなふうもしていた。
「出よう。」
庸三が煙草《たばこ》をふかしに廊下へ出ると、二人も続いて出た。震災のとき、やっと火を消しとめたこの洋風の劇場は、そのころようやく新装が仕揚がったばかりで、前の古典的な装飾が、ぐっと瀟洒《しょうしゃ》なものになっていた。三人は婦人休憩室へ入って、赤い縞《しま》の壁紙などを見まわしていたが、ふと庸太郎が父に声かけた。
「二階のホール御覧になりましたか。」
「さあ、どうだったかしら。」
「それあ綺麗《きれい》ですよ。ここではあすこの趣味が一番いい。」
「
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