戯《いたずら》そうな目をして、鼻頭へ人差し指をもって行った。
「そうね。また鴨《かも》にしようというんだろうが、おれも家内のいるうちは、どじばかり踏んで叱《しか》られたもんだが、このごろ少し性格に変化が来たようなんで。」
「元はもっと下手だったわけね。」
小夜子は笑った。
その晩庸三は、小夜子の家で遅くまで花を遊んだが、遊びに来ていたジャアナリストや漫画家も一緒だった。
ある晩庸三と葉子はデネションの舞踊を見に行って、そこで同窓の仲間と一緒に来ている庸太郎にも出逢《であ》った。そのころ庸三はしばらく家をあけていた。あれきりにもなり得ないで、彼は何かのきっかけから、人目の少ない銀座のモナミの食堂で、葉子と晩飯を食ったり、新らしく出来あがった武蔵野《むさしの》映画館へそっと入ったりしているうちに、また逗子へも行くことになった。
そのころ大戦後の疲弊から、西欧の一流芸術家が、まだしも経済状況の比較的良かった日本を見舞って、ちょうどレコオド音楽の普及しつつあった青年のあいだに、不思議な喝采《かっさい》を博していた。庸三も、ずっと前から軍楽隊の野外演奏の管弦楽《かんげんがく》や、イタリ
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