。」
庸三は笑っていたが、後にはだんだんそのロマンチックな身のうえや、竹を割ったようにさっぱりした気性も呑みこめて来た。新橋にいたころの同じ家《うち》の抱えだということ、ある有名な経済学の教授の屋敷の小間使をしているうちに、若さんと恋愛に陥り、その青年が地方の高等学校へ行くことになってから、そこを出て新橋で芸者になったこと、青年がやっとのこと捜しあてて来て、さらに新らしい魅力に惹《ひ》かされ、学校を出て結婚してからも、ひそやかな蔭《かげ》の愛人として、関係の続いていることなど、古い通俗小説めいた過去も解《わか》るようになった。それに瀟洒《しょうしゃ》な洗い髪の束髪などで、セッタ種の犬を片手に抱きながら、浴衣《ゆかた》がけで通りを歩いているのにも、時々出逢ったりして、この界隈《かいわい》では相当評判の美形だことも知るようになったし、花や麻雀《マージャン》が道楽で、そうした遊びにかけては優《すぐ》れた頭脳の持主であると同時に、やり口がいつも鮮やかすぎて、綺麗《きれい》な負け方ばかりしているのにも感心させられた。小夜子とちがってどの道彼女は生活者ではなかった。
「一戦どう。」
小夜子は悪
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