《ひざ》をついて聴診器をつかいはじめた。
「私も女関係で苦しむものですから……。」
 庸三がきまりわるそうに呟《つぶや》くと、ドクトルも苦笑して、
「なに、結構ですよ。」
「少し熱っぽい感じですが。」
 庸三は前から気管が悪いので、五六年海岸で暮らすようにと、前からドクトルに言われていたものだが、ドクトルも胸部を叮嚀《ていねい》に診《み》ていた。
「やっぱり神経衰弱ですね。薬をあげますから、よく眠るんですな。」
 紅茶を呑《の》みながら少し話して、ドクトルが帰ってから、庸三はうとうと眠りに誘われた。悪夢にうなされているような日常は、ふつふついやだと思いながら、いつかまた彼女の夢を見ていたことに気がついた。

 翌日になると、寝飽きた彼はもう床についてもいられなかった。彼は心の落着きを求めようと思って、乱雑に床の間に積み重なっている書物を引っくらかえしてストリンドベルグの小説を抜き出して来て開いてみた。彼は何か文学的な渇きをおぼえていたが、創作力の貧困にも気づいていたので、独りで書斎にいると、自分を支えきれないように寂しさに打たれた。世間ではモダアンな新興芸術が、花やかな行進曲を奏してい
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