の不乱次《ふしだら》を深く後悔しているように見えた。少なくとも今しばらく庸三との最初の軌道へ立ち戻っているよりほかないものと、虫を抑えているらしかったが、しかし考えようによっては清算しきれないものが残っているかも知れなかった。博士との関係をずっと持ち続けるには、かえって遠ざかっている方が、とかく名誉に傷つきやすい博士のために有利だと考え、擬装のためわざと庸三を利用しているように思われないこともなかった。そのころまだ博士の贈りものだとも気づかなかったので、捲毛《まきげ》のカナリヤの籠《かご》の側で、庸三はよく籐椅子《とういす》に腰かけながら、あまり好きでないこの小禽《ことり》の動作を見守っていたものだが、いくらかの潜在的な予感もあったので、葉子のこの小禽に対する感情をそれとなく探るような気持もあった。彼は少年のころ小鳥を飼った経験があるが、枝にいる時ほど籠の小鳥は好きではなかった。この繊細なカナリヤも飼い馴《な》れない葉子の手で、やがて死ぬだろうと思うと、好い気持がしなかった。
 やがて梅雨期にでも入ったのか、この海岸の空気も毎日|陰鬱《いんうつ》であった。葉子はある日のお昼過ぎ、婦人雑
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