か飽き足りなそうであった。しかし葉子は再び彼によって、今少し確かな足を踏み出そうとはしているのだった。
十六
この平凡な内海に避暑客が来るにはまだ間があった。砂|悪戯《いたずら》や水|弄《いじ》りをしたり、または海草とか小蟹《こがに》とか雲丹《うに》などを猟《あさ》ってあるく子供や女たちの姿は、ようやく夏めいて来ようとしている渚に、日に日に殖《ふ》えて来て、気の早い河童《かっぱ》どもの泳いでいるのも初夏の太陽にきらきらする波間に見られた。葉子も瑠美子と女中をつれて、潮の退《ひ》いた岩を伝いながらせせらぎを泳いでいる小魚を追ったり栗《くり》の毬《いが》のような貝を取ったりした。彼女はその毬のなかから生雲丹を掘じくり出すことも知っていた。庸三もステッキを突きながら所在なさに岩を伝って、葉子たちの姿の見えないような遠いところまで出て行って、岩鼻に蹲居《しゃが》んで爽《さわ》やかな微風に頸元《くびもと》を吹かれながら、持前のヒポコンデリアに似た、何か理由のわからない白日の憂愁に囚《とら》われていた。そうやっているうちにも彼は一刻も生活を楽しんでいる気にはなれなかった。一方早く
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