ある秀才のマルクシストの邸宅のあることも解っていた。葉子の家がそれらの青年たちにとって、気のおけない怡《たの》しいサルンとなることも考えられないことではなかった。ぼろぼろになった恋愛を、今さらそんな処《ところ》まで持ち廻るのも恥ずかしいことだったし、子供たちから遠く離れているのも不安だった。
葉子は借りた家の間取りや、玄関の見附き庭の構図などについて、嬉《うれ》しそうに説明していた。
「それが五十円なの。安いじゃないこと。」
そんな家を借りて、どうするのだろうと、小心な庸三は心配になった。連載ものを書いている間はいいとしても、それがいつまで続くものでもなかった。もちろん彼女はいつも贅沢《ぜいたく》をするとも決まってないので、本当に頭脳《あたま》の好い主婦だという感じのする場合もあったが、世帯《しょたい》は世帯として、とかく金のかかるように出来ていた。メイ・牛山あたりで買って来る化粧品だって、相当のものであった。たまにはいくら庸三が補助するにしても、いつかは破綻《はたん》が来るに決まっていた。
しかし葉子は、今までの生活を清算して、そこで真剣にみっちり勉強するつもりであった。瑠美子
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