《うち》を捜しに行ったのは、それから二三日してからであったが、そのころには奉書二枚に包んで水引をかけた葉捲の函《はこ》も買い入れて、庸三の部屋へ来て見せたりしていた。
ちょうどそれと同時に、下宿の部屋の窓先きに、丸い鳥籠《とりかご》がかかっていて、静かな朝などに愛らしいカナリアの啼《な》き声が、彼の部屋へも聞こえて来たが、それが葉子の引越しを祝って、彼女の弟が餞別《せんべつ》にくれたものだというのは嘘《うそ》で、実はK――博士の贈りものであったことを、迂濶《うかつ》な庸三も大分後になってやっと感づいて、それでともかくこのロオマンスに大詰が来たことも呑《の》みこめた。
庸三が葉子につれられて、初めて逗子へ行っていたのは、引き移ってから四五日してからであった。
庸三は実は行くのも物憂《ものう》いような気がしていたが、その家へぜひ来て見てもらいたいような様子なので、つい行く気になった。これからの季節には、あの辺の海岸も盛《さか》るころで、あのホテルに若い人たちも集まるはずであった。前から家をかりている若い流行作家のあることも知っていたし、長男の同窓でブルジョアの一人|息子《むすこ》で
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