らって、躯を診《み》てもらった。ドクトルは彼のこのごろの生活をよく知っていたが、ずっと第二号と暮らしていたので、いつもよりシリアスな態度で聴診器を執ってくれた。
「まあ神経衰弱でしょうね。よく眠れるように薬を加減して差しあげましょう。」
「どうもこういう生活が怖《こわ》いんですが、いけないんでしょうな。」
「それかと言って、この部屋も独りじゃ随分寂しいですからね。」
 ドクトルが帰ってから、彼は夕方まで眠った。

 四月の末になって、葉子は逗子《ずし》の海岸へ移ることになった。
 そのころにはK――博士《はかせ》との関係も、すでに公然の秘密のようなもので、双方の気分の和《なご》やかな折々には、葉子も笑いながら、興味的なその秘密をちらちら洩《も》らすのであった。
「ああいう人たちの生活は、本当に単純で罪のないものなのよ。私たちの生活がどんなにか花やかで面白いものだろうかと思っているの。あの人は職業上の関係で、下谷《したや》のある芸者を知っていたの。私と同じ痔《じ》の療治で入院していて、退院してからちょいちょい呼んでやったことがあったものよ。その人の面差《おもざ》しが私によく肖《に》ている
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