というのよ。」
「ふむ。君との関係は、いつから?」
 庸三はきいて見た。
「ううん、それももっと後になったら、詳しく話すけれど……。あの人の位置を摺《す》り換えさえすれば、書いてもいいわよ。いろいろ面白いこと教えてあげるから。でも、先生怒るから。」
 庸三は苦笑した。
「初めは……どこへ行った?」
「夜、遠いところへドライブしたら、あの人びっくりしてた。」
「退院してからね。」
「そうよ。遅くまで残っていた時、あの人の部屋でキスしてもらったの。」
 そうしたシインも容易に彼に想像できるのであった。
「面白い手紙もあるわよ。人格者らしく真面目《まじめ》で、子供のように単純なのよ。」
「見せてごらん。」
「それももっと後に。」
 しかし庸三は良心的に、あの博士のそうした秘密などにあまり触りたくはなかった。知れば知るほど自分の下劣さを掘り返すにすぎなかった。
「金があるのかしら。」
 ちょっとそれにも触れてみた。
 葉子はその収入を大掴《おおづか》みに計算しはじめたが、財産がどのくらいのものかは解《わか》りようもなかった。もちろん二人で遊ぶ時の費用は、大体葉子が払っているものと見てよかったか
前へ 次へ
全436ページ中250ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
徳田 秋声 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング