の微笑《ほほえ》み合っていることは、少し薄暗い電気の光りでは、庸三の目にそれと明白に映るわけには行かなかったが、毛布の裾《すそ》をまくってとかく癒《なお》りのおそい創《きず》を見る時になって、彼は急いで部屋の外へ出てしまった。そしてどんな言葉が囁《ささ》やかれたかは、知る由もなかった。
 庸三は圧《お》し潰《つぶ》されたような気持で、廊下を歩いていたが、ちょうどその時、婦人文芸雑誌記者のR――がやって来た。
 庸三がR――を誘って、部屋へ入って来たころには、久しぶりの創の手当も済んで、博士は旧《もと》の椅子にかえっていた。庸三は鑵入《かんい》りのスリイ・キャッスルを勧めながら、ずっと以前、同じ病院で、院長によって痔瘻《じろう》の手術をした時の話などした。その時博士は独逸から帰ったばかりであった。そうしているうちに、博士が自分に好意をもつと同時に、淫《みだ》らな葉子の熱病にも適当な診察が下されるであろうことも想像できるように思えた。何よりも博士には高い名誉と地位があった。彼は貴《とうと》いあたりから差し廻される馬車にも、時には納まる身分であった。
 しかし無反省な愛執に目を蔽《おお》われ
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