たかと思うと、ヒステリカルに彼を呼んで白い手を伸ばした。昼間葉子は庸三の勧めで幌車《ほろぐるま》に乗って町の医院を訪れ、薬を貰《もら》って来たのであったが、医者は文学にも知識をもっているヒュモラスな博士《はかせ》で、葉子の躰《からだ》をざっと診察すると、もうすっかり馴染《なじみ》になってしまった。しかしこの場合葉子に利くのはその処方ではなかった。
 庸三も何となしこの生活に疲れていた。新聞一回書くのにも気分が落ち着かなかった。葉子が病気になると一層|憂鬱《ゆううつ》であった。彼は葉子を落ち着かせるために、側へ寄って行くのだったが、彼女はいつも啜《すす》り泣いているような表情で、目も潤《うる》んでいた。
「先生も可哀《かわい》そうな人ね。」
 葉子はそう言って、彼の手を取ったが、この重苦しい愛着の圧迫に苦しんでいる、それは彼女の呻吟《しんぎん》の声でしかなかった。
「お察しの悪いったら……。」
 彼女は心に呟《つぶや》いているのだった。
 翌日も熱発が続いた。そして日の暮近くになってから、我慢しきれなくなった葉子の希望で、K――博士に来診を乞《こ》うことにした。
 縫紋《ぬいもん》の羽織
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