語で今下へおりて自動車を呼ぶから、一緒にドライヴしようと申し出た。無論相手がどんな種類の人間だかも解らなかったし、感違いの侮辱も感じたので、葉子は手まねで拒絶したが青年は肯《き》かなかった。そして押問答しているうちに、案内女や通りすがりの観客の足がそこに止まったところで、葉子は先刻ちょっと廊下で偶然に会って立話をした草葉の知合いの、婦人運動などやっているO――女史に頼んで来てもらって、やっと自身の身分を知らせることができた。O――女史は彼女が有名な女流作家であることを、わざと宣言したのであった。
その後葉子は、銀座の曾根《そね》のスタジオへ撮影に行った帰りに、飾り窓の前に立っていると、またしてもその青年外人が傍に立って、にやにやしているのに気づいたが、その時は目と目と笑《え》み合っただけで、二三町それとなく迹《あと》をつけられた感じだったが、何のこともなかった。そのころの葉子には、まだ娘気の可憐《しおら》しさや、文学少女らしい矜《ほこ》りもあった。
庸三は今外人のホテルに葉子と二人いて、そんなことも思い出さないわけに行かなかった。ここにいる若い外人は大抵官省や会社に勤めている技師の
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