ったが、同伴者があるかどうかくらいのことは解《わか》った。葉子はかねがね白色外人に興味をもっていたけれど、不良外人の多いことをも知っていたので、そんな観衆のなかで煩《うるさ》く話しかけられるのがいやだった。彼女は座席を離れて廊下へ出た。そして売場の前を通ってバルコニイへ出て、濠端《ほりばた》の夜景を見ていた。五月のころでもあったろうか、街路樹の葉はすでに蒼黒《あおぐろ》く繁《しげ》っていて、軽い雨がふっていた。それは外人から逃げるためか、それとも誘い出すためだったか、彼女の話だけでは本当のことは解る由もなかったが、多少の好奇心に駆られていたものと思っても、間違いではなかった。ずっと後にある独逸《ドイツ》の青年学徒と、しばらく係り合っていたという噂《うわさ》と照らし合わせてみても、すべてのモダアンな若い女性の例に洩《も》れず、そうした外人にある憧憬《しょうけい》をもっていたものと見てもよかった。――とにかくバルコニイに立っている葉子は、何か訳のわからない恐怖に似た胸の戦《わなな》きをもって、近づく廊下の靴音に耳を澄ましていたに違いなかった。果して青年は近づいて来た。そしてたどたどしい日本
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