で内輪の人のようになって、今は何かに不自由がちな庸三の家政上のことに働いてくれる青年K――も、ちょうど庸三の部屋へ来ていて、少し顔色をかえながら下宿と旅館へ葉子を捜しに行ったのだったが、どこにも見えなかった。
やがてK――青年は、下宿に留守居をしている葉子の小間使のお八重を、庸三の部屋へつれて来た。去年の夏、子供たちについて、葉子の郷里から上京して来たお八重は顔容《かおかたち》もよく調《ととの》って、ふくよかな肉体もほどよく均齊《きんせい》の取れた、まだ十八の素朴《そぼく》な娘だったので、庸三のところへ来る若い人たちのあいだに時々噂に上るのであったが、今庸三の前へつれられて来ると、ひどく困惑して、どこか腹の据《す》わったようなふうで、顔を紅《あか》くして居ずまっていた。
「葉子さんどこへ行ったの? 八重ちゃん知ってるんだろう。」
K――青年は気軽に訊《き》いてみた。そして二三度|詰《な》じってみても彼女は迷惑そうに笑っているだけで、何とも答えなかった。そしてその態度で見ると、庸三の部屋で感ずることのできないような、下宿の部屋でのいろいろの事件を、あまりに知りすぎているので、そんな質
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