かったが、それが葉子にふさわしい相手らしいという感じもした。そして何か事件の起こるかも知れない時の自身の取るべき態度をも、その瞬間ちょっと想像してみたりした。
「何か食べに行かない?」
 庸三は言い出した。
「私みつ豆食べたい。食べましょう。」
 やがて三人|繋《つな》がって外へ出た。

 すると温かい宵《よい》のこと、再び葉子が下宿から姿を消した。
 出て行くその姿を、電車通りの角のフルウツ・パアラにいる長男の庸太郎がちらりと見た。
「どうもそうらしいんだ。黒い羽織を着て雨傘《あまがさ》を差して、手に包みか何かもっているらしかった。原稿書きに行ったんかもしれない。」
 彼は話した。
 そのちょっと前に、今いつもの婦人雑誌記者と、自動車をおりて葉子が例の旅館へ入って行くところを、ふと通りがかりに見たといって、庸太郎がそれとなく報告するので、わざとしばらく近よらないようにしていた庸三が行ってみると、もうその時はその若い記者も帰ったあとで、葉子は夕刊を見ながらオレンジを食べていた。そして庸三の入って来るのを看《み》て、好い顔をしなかった。
 庸三の詰問に対する葉子の答えでは、彼女は記者をさ
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