いるかさえ解らなかったので、そんなこんなで葉子もすっかり気を腐らしていた。
しかし秋本の問題に、未練らしくいつまでもこだわっている葉子でもなかった。彼をそうした絶望に逐《お》いやったことも可哀《かわい》そうに思えたし、好い金の蔓《つる》を見失ったことも残念だったので、なおいくらかの自信と希望を失わないながらに、何か落し物でもしたような心寂しさを感じていた。
するうちに春が訪ずれて来た。大きな石が積み重ねられ、植木が片寄せられたままになっている庸三の狭い庭にも、餌《えさ》を猟《と》りに来て、枝から枝を潜《くぐ》っている鶯《うぐいす》の軽捷《けいしょう》な姿が見られ、肌にとげとげしい余寒の風が吹いていた。庸三の好きな菜の花が机の上の一輪|挿《ざ》しに挿されるころになると、葉子の蒼《あお》かった顔にもいくらか生気が出て来て、睫毛《まつげ》の陰に潤《うる》んでいた目にも張りが出て来た。名伏しがたい仄かな魅力を潜めている、頬《ほお》から顎《あご》のあたりにも、脹《ふく》らみが取り戻されて来た。どうにか用心ぶかく冬を凌《しの》いで来た庸三も、毎年このころになると、弱い気管の方にこびり着きやすい
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