と訊《き》いてみたりして、彼女の説明に微笑するくらいのことで、文学の質も立場も違うところから、格別注意を与えようともしなかった。短篇となると、彼女は恭《うやうや》しく彼の前に坐って、師弟の礼儀というようなものを崩さず、目を通してもらうことを哀願した。そして読みおわってから庸三が二三批評の言葉を口にすると、彼女は「どうもすみません」と言って、嬉《うれ》しそうにお辞儀をするのであった。庸三は自分の作風を模倣でもしたら、その人は大変損をするに違いないと考えていたし、教えらるるところがあろうとは思えなかった。でも彼女に才能がないわけではなかった。もっと骨格をつければ暢《の》びて行くだろうとは考えていたので、それにはいくらか自身のレアレズムの畑へ引き込んでみるのも悪くはあるまいと思っていた。恋愛も恋愛だが、葉子の建前からいえば、文学修行と世の中へ押し出してもらうことが彼女のかねがねの願いなので、彼の文壇的名声が一朝失墜したとなれば、恋愛の焔《ほのお》もその瞬間消えてしまうのも当然だったが、作品の反響もこのごろ思わしくないのに、秋本の消息も途絶えて、せっかく捜しに行ってみても、どこに潜《もぐ》って
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