に現われた。鬱憤《うっぷん》が爆発してしまった。
 庸三は二度と彼女を見舞わない腹で、棄《す》て白《ぜりふ》をのこして病室を出た。彼は手術当時の彼女の態度にすっかり厭気《いやけ》が差していた。彼女を憎んでもいた。
「あいつは何か始終たくらんでいる女なんだ。」
 庸三は途々《みちみち》山村に話した。
「うむ、そうだ。ちょっと剣があるんだ。」

 二三日してから、庸三はそれでも印税の前借りの札束を懐《ふとこ》ろにして、再び病室を訪れた。彼はほかのことはともあれ、別れた場合金のことで葉子側の人たちからかれこれ非難されることを恐れた。それにもし書く場合があるとしたら……彼はそこまで考えていた。表面葉子は八方から非難の矢を浴びせられていたとは言え、非難する人たちのなかにも、葉子に関心をもつものの少なくないことも庸三に解《わか》っていた。
 厚ぼったい束が、彼の懐ろから葉子の手に渡された。彼女はべらべらとそれをめくっていたが、二十枚も取ると、剰余《あと》をそっくり庸三に返した。
「すみません。」
「どうしまして。」
 庸三は病院中の噂《うわさ》になることを恐れていたし、また何か初まっていそうに思え
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