黒い髪の陰に濡《ぬ》れ色をした大きい目を見ながら、庸三は多分隔日くらいにガアゼを取り替えに来て、ずうと子供の時から知ってでもいた人のように、何かと甘えた口の利き方をする葉子に、揶揄《からか》い半分応酬しているであろうK――博士《はかせ》のことが心に浮かんだ。
「先生今お忙しい?」
「いや格別。」
「先生という人薄情な人ね。」
 葉子の顔は嶮《けわ》しくなった。
「どうして?」
「いいわ。先生の生活は先生の生活なんですから。」
 庸三も疳《かん》にさわったが、黙っていた。
「女が病院へでも入ってる場合には、男ってものはたまにお金くらい持って来るものよ。」
「金が必要だというんだね。」
「決まってるじゃないの。」
 葉子があまり刺々《とげとげ》しい口を利くので、負《ひ》け目《め》を感じていた庸三は、神経にぴりっと来た。
 ちょうどそのころ彼女は、彼女の態度に失望して帰って行った秋本から、長い手紙を受け取っていた。今まで気儘《きまま》にふるまっていた、彼女の月々の生活費の仕送りも、事によると途絶えるかも知れないのであった。彼女は気を腐らしていた。そこへ何も知らない庸三が初めて友達と一緒
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