っていたこともなかったが、庸三も少し酔っていたので、何かの弾《はず》みで一緒に自動車に載せて家へつれて来た。小夜子が新らしい庸三の部屋へ入るのは、今夜に限ったことでもなかったが、葉子の留守宅の二階からすぐ見下ろされるような門を二人で入った時には、庸三も自身の気紛《きまぐ》れな行為に疑いが生じた。かつての庸三夫婦もお互いに牽制《けんせい》され合っているにすぎなかったとは言え、口を利かないものの力も、まるきり無いわけには行かなかった。
小夜子を奥へ通すと、ちょうど遊びに来ていた青年作家の一人と一緒に、長男の庸太郎も出て来て、面白そうに酔った小夜子を見ていた。小夜子は握り拳《こぶし》で紫檀《したん》の卓を叩《たた》きながら、廻らない舌で何か熱を吹いていた。
「私は三十三なんだ。」
と、それだけが庸三の耳にはっきり聴《き》き取れるだけで、何をきいても他哩《たわい》がなかった。
間もなく彼女はふらふらと立ちあがった。
「お前ちょっと送ってくれないか。」
庸三は子供に吩咐《いいつ》けたが、送って応接室まで出て行くと、小夜子はふと立ち停《ど》まって、誰という意識もなしに、発作的に庸三の口へ口
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