こで書いてもいい?」
葉子は書く仕事を持っていることに、何か優越を感ずるらしく、庸三が頷《うなず》くと、じきに玄関口の電話へ出て行って、これも新調の絵羽の羽織や原稿紙などを、自動車で持って来るように、近所の下宿屋を通して女中に吩咐《いいつ》けた。
しかし間もなく錦紗《きんしゃ》の絞りの風呂敷包《ふろしきづつ》みが届いて、葉子がそのつもりで羽織を着て、独りで燥《はしゃ》ぎ気味になったところで、今夜ここで一泊したいからと女中を呼んで言い入れると、しばらくしてから、その女中がやって来て、
「今夜はおあいにくさまですわ。少し立て込んでいるんですのよ。」
庸三はその素気《そっけ》なさに葉子と顔を見合わした。やがて自動車を呼んで、そこを出てしまった。
「小夜子さん光一《ぴかいち》でなきゃ納まらないんだ。」
葉子は車のなかで言った。
ある夜も小夜子はひどく酒に酔っていた。
酒のうえでの話はよくわからなかったけれど、片々《きれぎれ》に口にするところから推測してみると、とっくに切れてしまったはずのクルベーが、新橋の一芸者を手懐《てなず》けたとか、遊んでいるとかいうようにも聞こえたし、寄越《よ
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