《どうもう》な顔の体のずんぐりした小女の、ちょくちょく物を持ち出して行くのにも困ったが、むやみといりもしないものを買いこむのが好きな新参のお光にも呆《あき》れた。お鈴は強情で、みすみすこの小女のせいだとわかっていてもなかなか白状しなかったが、わがままなお光は何かといえばお暇を下さいと脹《ふく》れるのであった。

      十三

 そのころには川沿いの家も大分|賑《にぎ》わっていた。この商売にしては一風かわったマダム小夜子のサアビスぶりに、集まって来るのはことごとく文学者、画家、記者といったようなインテリ階級の人たちばかりであった。客種は開業当時と全然一変していた。しかしその間にも、たまには彼女のクルベー以前、お座敷へ出ていた時分の客も少しはあるものらしく、暮には何か裏までぼかし模様のあるすばらしい春着などを作って、※[#「※」は「女へん」+「島」の「山」に代えて「衣」、217−下−3]嫋《じょうじょう》と裾《すそ》を引きながら、べろべろに酔って庸三の部屋に現われることもあった。多分それは株屋か問屋筋《とんやすじ》の旦那《だんな》か、芳町《よしちょう》に芸者屋をしていたころの引っかか
前へ 次へ
全436ページ中190ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
徳田 秋声 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング