《かえ》ることもできた。
 その日も出癖のついた庸三は、ふらふらと家を出て、通りで自動車を拾ったが、憂鬱な葉子の病室を見舞う気もしなかったので、自然足は川ぞいの家へと向いた。何といっても家が広くなっていただけに気分の悪いはずもなかったが、出来あがってみると、どこもかしこもやってつけの仕事のあらが目について、どこから狩り立てて来たかも知れない田舎大工の無細工さが気になった。それに工事中ろくろく家財や書物の整理もできなくて、裏の家へ積み込んであったので、紛失したものも少なくなかった。近所の路次うちの悪太郎どもが、古|板塀《いたべい》を破って庭から闖入《ちんにゅう》し、手当たり次第持ち出して行ったらしい形跡が、板塀の破れ目から縁側まで落ち散っている雑書や何かを見ても解《わか》ったが、昔ものの手堅い古建具、古畳、建築の余材、そんなものもいつの間にか亡くなってしまった。有るはずのものが見えないのに気がついて、いくら捜しても見つからないようなことも何か寂しい思いであった。好い女中がいなくて勝手元の滅茶々々《めちゃめちゃ》になったことも、庸三の神経を苛立《いらだ》たせた。お鈴という古くからいる、童蒙
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