葉子の愛嬢の瑠美子も出るという、年末の総ざらいの舞踊会が、雪枝の家《うち》で催されるというので、葉子は庸三にも来るようにと誘うので、あまり気の進まなかった庸三は、しばらく思案した果てに、やや遅れて青山の師匠の家を訪れたが、庸三が予覚していたとおり、彼の来たことを妙に憂鬱《ゆううつ》に感じているらしい彼女を、群衆のなかに発見した。庸三は舞台の正面の、少し後ろの方に坐って、童謡を踊る愛らしい少女たちを見ていたが、後ろの隅《すみ》の方に、舞踊にも造詣《ぞうけい》のふかい師匠の若い愛人の顔も見えた。葉子は始終紋附きの黒い羽織を着て、思いありげな目を伏せ、庸三の少し後ろの方に慎《つつ》ましく坐っていたが、そうした明るい集りのなかで見ると、最近まためっきり顔や姿の窶《やつ》れて来たのが際立《きわだ》って見えた。葉子はいつかこの帰りがけに、省線の新宿駅のブリッジのところで、偶然この青年に逢《あ》ったとかで、帰ってから、感じのよかったことを庸三にも話して聞かしたものだったが、実際はそれよりもやや親しく接近しているらしいことが、彼女のその後の口吻《くちぶり》でも推測できるのであった。庸三の頭脳にはどうか
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