しく、目の縁《ふち》がやや紅《あか》くなっていた。庸三はこのごろ仲間の人たちで、ここを気のおけない遊び場所にしている人も相当多いことを考えていたので、隣りの客がもしかするとその組ではないかと思ったが、小夜子に聞いてみると、それは最近ちょくちょく一人でそっとやって来る、近所の医者だことが解《わか》った。彼も風変りなこのマダムのファンの一人で、庸三もある機会にちょっと診《み》てもらったこともあって、それ以来ここでも一度顔が合った。不思議なことには、それが女学校を出たての葉子がしばらく身を寄せていたという彼女の親類の一人であった。葉子が人形町あたりの勝手をよく知っていて、わざわざ伊達巻《だてまき》など買いに来たのも理由のないことではなかった。そしてそう思ってみると、ぴんと口髯《くちひげ》の上へ跳《は》ねたこのドクトルの、型で押し出したような顔のどこかに、梢家《こずえけ》の血統らしい面影も見脱《みのが》せないのであった。がっちりしたその寸詰りの体躯《たいく》にも、どこか可笑《おか》しみがあって、ダンスも巧かった。庸三は小夜子と人形町のホオルを見学に入ったとき、いかにも教習所仕立らしい真面目《ま
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