》の同意の下に、秋本の宿を訪問すべく、少し濃いめの銀鼠地《ぎんねずじ》にお納戸色《なんどいろ》の矢筈《やはず》の繋《つな》がっている、そのころ新調のお召を着て出て行った。多少結核性の疑いもあるらしい痔疾《じしつ》のためか、顔が病的な美しさをもっていて、目に潤《うる》んだ底光りがしていた。少なからぬ生活費を遠くにいる秋本に送らせながら、身近かにいる庸三に奉仕しているということが、たといそれが小説修業という彼女の止《や》みがたき大願のためであり、その目的のためには有り余る秋本の財産の少し減るぐらいは、大した問題ではないにしても、時々には秋本を欺いていることに自責の念の禁じ得ないこともあって、それが痔の痛みと一緒に、ひどく彼女の神経を苛立《いらだ》たせた。同時に葉子の体を独占的に縛っているかのように思える庸三が、ひどく鈍感で老獪《ろうかい》な男のように思えて、腹立たしくもなるのであった。傍《はた》からの目には、とかく不純だらけのように見えるであろう彼女の行為も、彼女自身からいえば、現われ方は歪《ゆが》んでいても、それは複雑で矛盾だらけの環境と運命のせいで、真実《まこと》は思いにまかせぬ現実の
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