》が実るころに、弟子たちを引き連れた友人とともに、一ト月足らずも滞在していたころの面影《おもかげ》はなくなって、位置も奥の方を切り開いて、すっかり一流旅館の体裁を備えていた。よく方々案内してくれた後取り子息《むすこ》が、とっくに死んでいたり、友達が騒いでいた娘もよそへ片づいて幾人かの母親になっていた。酒も呑《の》めず弟子もいない庸三は、しばらくいるうちにすっかり孤独に陥って、酔って悪く絡《から》まってくる友達を防禦《ぼうぎょ》するのに骨が折れ、神経がささくれ立ったように疲れて来たものだったが、今考えるとそれも過去の惨《みじ》めな彼の姿であった。後になってみれば、今|演《や》っていることは、それよりももっと醜いものかも知れなかった。
 葉子は着いた当座ここへ連れて来たことを感謝するように、そわそわした様子で、一ト風呂《ふろ》あびて来ると、例のガアゼの詰め替えをした後で、橋を渡ってこの温泉町を散歩した。町の中心へ来て、彼は小懐かしそうに四辺《あたり》を見廻した。そして小体《こてい》なある旅館の前に立ち止まると、
「ここに玉突き場があったものだ。主人は素敵な腕を持っていて、僕はその男にキュウ
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