ぶ》しのかかった古い部屋を今更のように見廻した。
「この家もどうかしなきゃ。」
「そうですね、もしお建てになるようでしたら、あの大工にやらしてごらんなさいましよ。あれは広小路の鳥八十《とりやそ》お出入りの棟梁《とうりょう》ですの。」
大ブルジョアのその鳥料理屋が彼女の彼と、何かの縁辺になることも、その後だんだんに解《わか》って来た。
その時であった、凝ったその鳥料理屋の建築や庭を見いかたがた末の娘もつれて、晩飯を食べに行ったのは。美事な孟棕《もうそう》の植込みを遠景にして、庭中に漫々とたたえた水のなかの岩組みに水晶|簾《すだれ》の滝がかかっていて、ちょうどそれが薄暮であったので、青々した寒竹の茂みから燈籠《とうろう》の灯《ひ》に透けて見えるのも涼しげであった。無数の真鯉《まごい》緋鯉《ひごい》が、ひたひた水の浸して来る手摺《てすり》の下を苦もなげに游泳《ゆうえい》していた。桜豆腐、鳥山葵《とりわさ》、それに茶碗《ちゃわん》のようなものが、食卓のうえに並べられた。黒の縮緬《ちりめん》の羽織を着て来た清楚《せいそ》な小夜子の姿は、何か薄寒そうでもあったが、彼女はほんのちっとばかし箸《は
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