ってくれません? 私あすこで占《み》てもらいたいことがありますの。」
「いいとも、事によったら僕も。――君は何を占てもらうんだい。」
「差し当たり何てこともないんですけれど、私、妙ね。随分長いあいだの関係で、昔は一緒に世帯《しょたい》をもったこともありましたの。今は別に何てこともないんです。だけど、相手が逃げるとこっちが追っ駈《か》け、こっちが逃げると、先方が追っ駈けて来るといったあんばいで、切れたかと思うと時たってまた繋《つな》がったりして……変なものですね。」
 小夜子はいつになくしんみりしていた。
「どんな人?」
「それが近頃ずっとよくないんですの。」
 庸三は小夜子の好くような男はどんな男かと、それを探りたかったが、彼女はただそう言っただけで、その相手の概念だも与えなかった。しかしそれから大分たってから庸三がある晩茶の間の大振りな紫檀《したん》の火鉢《ひばち》の側にいると、その日はひどく客が立てこんで、勝手元も忙しく、間断なく料理屋へ電話をかけたりして、小夜子も不断着のまま、酒の燗《かん》をしたり物を運んだりしていたが、ふと玄関の方の襖《ふすま》を開けて※[#「※」は「糸」+「
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