ゃ》を勧めていた。体も魂も彼女はすっかり彼のものになりきった気持であった。彼女は畳に片手をついて吸子《きゅうす》のお茶を茶碗《ちゃわん》に注《つ》いだ。彼の寝所へ入ったのは、すでに一時過ぎであった。その時まで彼は座敷で方々から廻って来る盃《さかずき》を受けていたので、窓が白むまで知らずに爛睡《らんすい》していた。
 朝のお化粧をして、葉子が松川と差向いでいるところへ、にわかに段梯子に跫音《あしおと》がして、最初この結婚を取り持った葉子の従兄《いとこ》筋に当たる男が半身を現わした。
「いやどうもすっかり世話女房気取りだね。こいつは当てられました。」
 県の議員なんかをやってる素封家《そほうか》の子息《むすこ》である従兄はそう言って、顔を赤くしている新夫婦に目を丸くした。葉子もこの従兄とのかつての恋愛模様と、新夫婦を母とともども小樽まで送って行った時の、三人の三角なりな気持の絡《から》み合いは、何か美しい綾《あや》の多い葉子の話しぶりによると、それは相当|蠱惑的《こわくてき》なローマンスで、モオパサンの小説にも似たものであった。途中のある旅館における雨の侘《わび》しい晩に、従兄への葉子の素
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