振りの媚《なま》めかしさが、いきなり松川の嫉妬《しっと》を抑えがたいものに煽《あお》りたてた。ちょっと話があると言って、にわかに葉子は薄暗い別室に拉《つ》れこまれた。
「おれはお前の良人《おっと》だぞ!」
 彼はそう言って葉子が顫《ふる》えあがるほど激情的に愛撫《あいぶ》した。
 着いてからも、従兄はしばらくその町に滞在していた。そして毎夜のように酒と女に浸っていたものだった。

 ある日離れで葉子と庸三とが文学の話などに耽《ふけ》っていると、そこへ母親が土間の方から次ぎの間の入口へ顔を出して、今瑠美子たちの継母《ままはは》と二人の書生とが、この古雪の町へ自動車で乗りこんで来たというから、多分子供たちを取り戻しに逆襲しに来たに違いない。と、あわただしく報告するのであった。
「そう!」
 葉子はその時少し熱があって、面窶《おもやつ》れがしていたが、子供のこととなると、仔猫《こねこ》を取られまいとする親猫のように、急いで下駄《げた》を突っかけて、母屋《おもや》の方へ駈《か》け出して行った。
 庸三は何事が起こるかと、耳を聳《そばだ》ててじっとしていたが、例の油紙に火のついたように、能弁に喋
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