ぎわへ小突きまわすようにした。
「御免なさい、御免なさい。そんなに怒らないでよ。私いけない女?」
やがて庸三は離れた。そして椅子に腰かけた。
そうしている処へ、瑠美子が「まま、まま」と声かけながら段梯子《だんばしご》をあがって来た。
「瑠美ちゃん下へ行ってるのよ。」葉子は優しく言って、
「まま今おじちゃんにお話があるの。」
やがて葉子はそのことはけろりと忘れたように、話を転じた。妹が近々|許婚《いいなずけ》の人のところに嫁《とつ》ぐために、母に送られて台湾へ行くことになったことだの、母の帰るまでゆっくり逗留《とうりゅう》していてかまわないということだの――。
庸三は灰色の行く手を感じながらも、朗らかに話している葉子の前にいるということだけでも、瞬間心は恰《たの》しかった。すがすがしい海風のような感じであった。
九
庸三の今度の訪問は、滞在期間も前の時に比べてはるかに長かったし、双方親しみも加わったわけだが、その反面に双方が倦怠《けんたい》を感じたのも事実で、終《しま》いには何か居辛《いづら》いような気持もしたほど、周囲の雰囲気《ふんいき》に暗い雲が低迷している
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