葉子は縁側の椅子《いす》を彼にすすめて、子供取り戻しの経緯《いきさつ》を話した。ここからそう遠くはない山手の町の実家へ引き揚げて来ている継母は、自分の子がもう二人もできていて、とかく葉子の子供たちに辛《つら》く当たるのであった。
「北海道時代に私が目をかけて使っていた女中なんですよ。その時分は子供にもよくしてくれて、醜い女ですけれど、忠実な女中だったんですのよ。松川は相当のものを預けて行ったものらしいんですの。上海《シャンハイ》で落ち着き次第、呼び寄せることになっているらしいんですけれど、あの子たちは食べものもろくに食べさせられなかったんですの。」
「君がつれて来たのか。」
「私が乗り込んでいって、談判しましたの。私には頭があがらないんですの。」
「それでこれから……。」
「先生にご迷惑かけませんわ。」
「…………。」
「先生怒らないでね。私あの人に逢ったの。」
 庸三はぎょっとした。それが庸三も一度逢って知っている秋本のことであった。
「誰れに?」
「私には子供を育てて行くお金がいるんですもの。」
 庸三はいきなり恐ろしい剣幕で、葉子の肩を両手で掴《つか》んで劇《はげ》しく揺すり、壁
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