転《ころ》がし、数珠《じゅず》を繰るのであった。
「この人は、きっと貴方《あなた》の処《ところ》へ帰って来ます。慈父の手に縋《すが》るようにして帰って来ます。貴方がもし行くにしても、今は少し早い。月末ごろまで待っていなさるがいい。そのころには何かの知らせがある。」
卜者は言うのであった。
とにかく庸三は再び葉子の家を見舞うことにして返電をうった。そしてその翌日の晩、いくらかの土産《みやげ》をトランクに詰めて、上野を立った。実はどこか福島あたりの温泉まで葉子が出て来て、そこで庸三と落ち合う約束をしたので、彼は今そうやって汽車に乗ってみると、またしても彼女の家族や町の人たちに逢うのが、憂鬱《ゆううつ》であった。しかし翌日の午後駅へついてみると、葉子|姉妹《きょうだい》や弟たちも出迎えていて、初めての時と別に渝《かわ》りはなかった。彼は再び例の離れの一室に落ちついた。瑠美子のほかに、ちょうど継母《ままはは》の手から取り戻した二人の子供もいて、葉子は何かそわそわしていたが「ちょっと先生……」と言って、彼をさそい出すと、土間を渡って二階へ上がって行くので、彼も何の気なしについて上がった。
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