んなお婆《ばあ》さんが若い燕なんかもってるのは。私つくづくいやだと思いますわ。」
庸三は苦笑して、
「耳が痛いね。」
「いいえ、男の方《かた》はいいんですよ。男の方はいくらお年を召していらしても、決して可笑《おか》しいなんてことはありませんね。」
そうしているうちに、彼は何か食べたくなって来た。妻を失ってから、彼の食膳《しょくぜん》は妻のやり方を長いあいだ見て来ただけの、年喰いのチビの女中のやってつけの仕事だったので、箸《はし》を執るのがとかく憂鬱《ゆううつ》でならなかった。
「銀水と浪花屋《なにわや》とどっちにしましょうか。」
「そうね、どっちも知らないけれど……。」
「浪花屋の方が、お値段はお恰好《かっこう》な割りに、評判がいいようですから。」
庸三は鮎《あゆ》の魚田《ぎょでん》に、お椀《わん》や胡麻酢《ごます》のようなものを三四品取って、食事をしてから、間もなくタキシイを傭《やと》ってもらった。
ある朝庸三は、川沿いのその一室で目をさました。忙《せわ》しいモオタアや川蒸気や荷足《にたり》の往来が、すでに水の上に頻繁《ひんぱん》になっていた。
昨夜彼は書斎の侘《わび》しさ
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