椅子《いす》に腰かけて、私たちに体を拭かせたり煽《あお》がしたり、寝るときは体を揉《も》む人に小説を読む人といったあんばいで……。」
「ああ、それで君なんかも……。」
小夜子は、三キャラットもあるダイヤの粒の大きいのと小さいのと、それに大振りな珊瑚《さんご》のまわりに小粒の真珠を鏤《ちり》ばめたのなど、細い指に指環《ゆびわ》をでこでこ嵌《は》めていた。
「その人どうしたかね。」
「姐さんですか。それが先生あの有名な竹村先生と軽井沢で心中した芝野さんの旦那《だんな》を燕《つばめ》にしているんですよ。」
「なるほどね。」
「お金がうんとありますから、大森に立派な家を立てて、大した有閑マダムぶりですよ。」
「芝野というのを、君知っている?」
「ええ、時々三人で銀ぶらしますわ。こう言っちゃ何ですけれど、厭味《いやみ》な男よ。それあ多勢《おおぜい》の銀座マンのなかでも、あのくらいいい男はちょっと見あたらないかも知れませんがね。赤いネクタイなんかして気障《きざ》よ。それでショウウインドウなんかで、いいネクタイが見つかると腐るほどもってるくせに、買ってよう、ようなんて甘ったれてるの。醜いものね、あ
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