。」彼は腹這《はらば》ひになつて、莨《たばこ》をふかしながら、そんな事を訊《たづ》ねた。
「ふゝ」と、女は嗤《わら》つてゐたが、「まあ余り好いことはありませんね。親元へ帰つて行く人もあるし、東京でお客と一緒になる人もあるしさ。」
「君なんか何うするんだね。」
「何うしようと思つて、今思案中なのよ。」女も起きあがつて莨をふかしながら、「今のところ二人ばかり当があるんだけれど……。」
「商人かね。」
「さうね。一人は日本橋の木綿問屋の旦那だし、一人は時々東京へ出てくる田舎のお金持だけれど、どつちもお爺いさんよ。木綿問屋の方は、まあそれでもまだ四十七八だから、我慢のできないこともないのよ。その代り上さんも子供もあるから、行けばどうせ日蔭ものさ。子供のお守なんかもして、上さんの機嫌を取らなくちやならないから、なかなか大変よ。田舎の隠居の方は、それにかけては気楽だけれど、お爺いさんは世話がやけて為方《しかた》がないでせう。だから孰《どつち》も駄目さ。」
「君のところへは、何うしてさう年寄ばかり来るんだ。」彼は痛ましいやうな表情をして訊《き》いた。「君はまだ若くて美しいぢやないか。」
「ふゝ」と、
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