を喜んだ、我輩の家人も同様に観察して、其見る所同一であったから、茲《ここ》に猫は赤色を好むと言うて可かろう、左《さ》りながら猫によりては少しも感ぜぬのがある、又年齢によりて相違がある、而《しか》して其赤色に飛着くのは幼少な猫程早く稍《や》や老いたるは甚《はなは》だ遅かった、又或猫は赤にも白にも青にも何の感興を起さなかったように見えたから、凡《すべ》ての猫は必ず赤色を愛するものであるとは言えまいが、実験は甚だ少数なれども、我輩が調査したる範囲に於ては、猫は赤色を愛するものと言うても差支はないのである。
猫|殊《こと》に小猫は赤色を愛すとすれば、首環や涎掛の類は赤いのが第一である、又小猫が赤い首環を嵌め、又は赤い涎掛をして居るのは別けて可愛らしいものであり、殊に白いのや水色の如きは汚れ易いものであるから、猫の欲する上からも、又飼育して愛翫する上からも、小猫には赤色の紐又は涎掛を用いるが好い子供の四五度も生んだ所の爺猫や婆猫には首環でもあるまいし、又涎掛でもあるまいが、丁度《ちょうど》斯様なものを与えて愛を増す所の小猫には、他の色よりも赤が好い、猫も喜び吾々が見ても可愛らしい、猫を実用的に
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