猫と色の嗜好
石田孫太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)赤色《せきしょく》を

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)白色|若《も》しくは

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)平太郎[#「平太郎」に傍点]と
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 聞く所によれば野蛮人は赤色《せきしょく》を愛すると云うが、我輩《わがはい》文明人にしても尚《なお》野蛮の域に居る所の子供は赤色を好み、段々と大きくなるに従って、色の浅いものを好むようになる、而して純白色のものを以て最も高尚なものとするのは、我輩文明人の常である、左《さ》れば染色上の嗜好より人の文野を別てば、白色|若《も》しくは水色等を愛する者は最も文化したるもので、青色《せいしょく》だの紅色《こうしょく》だの又は紫|抔《など》を愛するものは之に中し、緋《ひ》や赤を好む者は子供か又は劣等なる地位に居るものと言うて良い、扨《さ》て是から猫は如何なる染色を好むかに就て述べるのであるが、矢張《やは》り野蛮人にも及ばぬ猫のことなれば、其《その》好む所の色は燃ゆるが如き赤色であるらしい、併し是れは確乎《かくこ》と
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