飼育する人は兎も角、之《これ》を愛して飼育する人の心得べき点と信ずる、又実用的に飼育する人でも美わしい毛色に、赤い紐を首に廻したのは見苦しくもあるまいと思うから、詰らぬ様なことなれども我輩の調査した所によりて猫が赤色を好むと云うことを述べて置く併《しか》し今も言う通り或は偶然の結果かも知れぬのであるから間違っても責は負わないのである、色の嗜好よりする首環や涎掛のことは前述の如しとして、茲に是非共白又は水色の如き派手なる首環又は涎掛を結び且《か》つ鈴を着けて置くべき猫がある、之は真黒の熊猫で、此黒い猫は往々にして暗い処に居る時に尾を踏まれたり足を踏まれたりするものである、そこで其首に派手な首環を結び且《か》つ鈴を着け置くなれば、何れに居るかを知ることが出来るから、不測の危害を与うるようなことはないものである、尤も猫の目は能く暗夜に光るものであるから、起きて居る時には其必要も無いようであるけれども寝入て居る時には甚だ険難である、思うに猫の尾や足を踏みて彼をして悲しき声を発せしめたことは何人も実験したことであろう、左れば黒い猫には色の嗜好如何に関せず其身の保護の為めに白色又は水色等の首環と鈴
前へ
次へ
全5ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
石田 孫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング