知つている通り、資本主義經濟組織に必然的に伴う犧牲だ。しかも失業によりて資本主義社會のからくりが最も直接にわかるから、失業者の中に最も革命的分子が生ずることさえあり得る。その失業者が社會主義運動の障害になるというような理窟を創造する程僕の頭は獨創的でない。
 次にあの文句は中西氏の批難するように概念ではなく事實を指しているのである。不幸にして社會主義者と名乘つている不良青年組や、何ぞ言えば日本刀を振り廻すような連中のあることを吾々は耳にしている。しかもその背後にいかさま師がひそんでいる場合のあることも聞いている。それが爲めに健全なる勞働大衆に社會主義が如何に誤解され、從つて社會主義運動が障害されたかも知つている。殊に社會主義運動に古い歴史を有する歐米諸國ではこの種のいかさま者が風向次第で社會主義者になつたり、反動派の手先になつたりした例がいくらもある。マルクスが「頼み手のない辯護士、患者のない醫者、田舍新聞のもぐり記者其他々々」とこれ等いかさま社會主義者の合成分子を指摘したのでもそのことは知れる。
「現實」を尊ぶ中西氏が僕の文句を「現實」のままに解釋し、文字通り「ごろつき、食いだおし」
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