々」を意味するのだと獨斷し、この獨斷を僕に無雜作になすりつけて、なすりつけられた泥人形の「平林」に向つて「平林君は果してその人々を指してごろつきと言い食い倒しという理由を見出すことが出來るか?」と色を作《な》してきめつけられる。かくして泥人形の「平林」は參つた。生きた人間の平林は參らぬ代りに自分が「泥人形」でないということをわざわざ辯明する「責任」を背負わされた。僕が、中西氏のいうように「現實」を見損つて「輕薄な概念」に走つたか、或は中西氏が周章《あわ》てて千慮の一失の誤解をやられたかは何人の判斷にでも僕はまかせる。
 實を言うと辯明するよりもあの文章をもう一度讀み直していただくだけの勞力をおしまれなかつたら誤解は氷釋する筈だ。僕は「失業勞働者」と「ごろつき」とを混同する程の血迷い方は決してしなかつたつもりだ。中西氏自身で勝手に二つの概念を結びつけて、こん度は自分でこしらえた假想敵に向つて批難を浴せかけられるのだ。
 しかしおのぞみなら辯明する。第一に無論あの文句は「失業勞働者」をさしているのではない。こんなわかりきつた誤解をしたりそれに答えたりするのは吾々の恥辱だ。失業勞働者は誰でも
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