た以上一言挨拶して中西氏の誤解を解く責任があるように感じられる。
 問題の文句は「社會主義運動の中に働くことの嫌いなごろつきや食いたおしがまじりこむと同じように――」という一句である。僕は急いで原稿を書くので、これまでにあとから訂正したくなるような不用意な文句を書いたことは屡※[#「※」は二の字点、第3水準1−2−22、292−上−26]ある。併し、この一節は今でも少しも訂正する必要を感じない。文字通りの意味で今なおそう信じているのである。ところが誰が讀んでもわかりきつた平明の文句の中から、中西氏は一ダースばかりのすばらしい概念をひつぱり出された。何にもない袖の中から一ダースも卵を出して見せる手品師のように。
 中西氏はまず、この文句を讀んで「何というブルジョア的な口吻だろう!」と概括的な第一矢を投げつけ、次に僕(平林)が「ブルジョア的眼光をもつて今の社會運動を見て」いるものと斷定し、「僕等(中西氏)プロレタリヤの感情からすれば到底そんな輕薄な概念で片づけてしまうに忍びない」と自らの立場を表明され、一轉して、僕の例の文句を「失業勞働者」「餓死か破壞か二中一を選ばなければならない悲しい人
前へ 次へ
全6ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
平林 初之輔 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング