力と妥協して、その庇護のもとに発達して来たからである。
二
プロレタリアの勝利のために貢献するといふことが、マルクス主義文学の評価の基礎とならねばならぬことは上述の説明によりて明かになつたと思ふが、マルクス主義文学も、文学である以上それだけでは不十分である。共産党宣言が最もすぐれた芸術品であるとは言へないからである。
そこで、この根本原理に附随する、さま/″\な小さい原理が必要になつて来る。たとへば、文学作品はたゞある政党の綱領を解説するやうなものではなくて、新しい何物かを創造してゐなければならぬとか、或は、或る観念を露骨にあらはした作品はよくない作品であるとかいふ種類の小さい原理がそれである。これ等の諸原理はマルクス主義にも、政治にも関係のない、一般に芸術そのもの、若しくは文学そのものに関する原理である。こゝに於いてルナチヤルスキーのテーゼは、そして一般にマルクス主義的文学の理論体系は、かくの如く二つの部分――政治的部分と芸術的部分とから成立してゐるのであることがわかる。しかもこの二つの部分はいゝ加減につきまぜてあるのではなくて、政治的部分が絶対上位に
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