一派を唯物論者であると批難した。これに対してクロオド・ベルナアルは次のやうに反駁してゐる。
[#ここから1字下げ]
『生気論者たちは、生命といふものを、何物にも決定されないで、自由自在にはたらいてゐる神秘的な、超自然的な一種の力であると考へ、生命現象を一定の有機的及び理化学的条件にむすびつけて説明しようとする人々を唯物論者だと批難してゐる。これは謬つた考へであるけれども、一旦それにとりつかれると容易にそれを根絶することはできぬ。たゞ科学の進歩のみがかゝる謬想を消滅させるであらう。』
[#ここで字下げ終わり]
 然らば科学の進歩は私たちに何を示したであらうか? ゾラは、これを、 椽大の筆をふるつて次の如く要約してゐる。
[#ここから1字下げ]
『前世紀(十八世紀をさす)に於て、実験的方法の正確なる応用によりて、化学及び物理学が生れ、この方面に於ては、不合理な超自然的な説は影をひそめた。分析のおかげによりて、物理化学的現象には一定の法則があることが発見され、様々な現象が明かにされた。ついで新しい一歩が踏み出された。今尚ほ生気論者たちが神秘的な力を認めてゐる生物体も亦、物質の一般的機構により
前へ 次へ
全18ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
平林 初之輔 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング