て説明され、それに還元せしめられた。科学は、生物体に於ても無生物体に於ても、一切の現象の存在条件は同じであることを証明し、それによりて、生理学は徐々に、化学や物理学のやうな確実性を帯びて来た。しかしそれで、進歩は停止したゞらうか? 決してさうではない。人間の肉体の機構がわかつて来ると、今度は、人間の情的及び知的のはたらきに移つてゆかねばならぬ。さうなつて来ると、私たちは、これまで哲学及び文学に属してゐた領域にはいつてゆくことになり、科学によりて、哲学者や文学者の臆測が決定的に征服されることになる。今日私たちは実験物理学及び実験化学を有してゐる。そのうちに私たちは実験生理学を有するやうになり、更に進んで実験小説を有するやうになるであらう。凡てが関連してゐるのである。私たちは、生物体の決定性を知るためには、無生物体の決定性から出発しなければならなかつた。而して、今や、クロオド・ベルナアルのやうな学者が、人体にも一定の法則がはたらいてゐるといふことを示したのであるから、私たちは、この次には思想及び感情の法則がつくられるやうになるだろうと断言しても、謬るおそれはないのである。道端の石にも人間の
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