しいやうな氣がしてならない。」
「眞《ほ》ンとに」と、友は痛く感じたやうな語調《てうし》で、「僕等の將來は暗黒《あんこく》だ。けれども其の埒外《らちぐわい》に逸《ゐつ》することの出來ないのが運命《うんめい》なのだから爲方《しかた》がない、性格悲劇《せいかくひげき》といふ戯曲《ぎきよく》の一種《いつしゆ》があるが、僕等が丁度《てうど》其だ。僕等の此《こ》の性格が亡《ほろ》ぼされない以上、僕等は到底《たうてい》幸福《かうふく》な人となることは出來ない。」
「けれども、」と私は口《くち》を挿《はさ》んで、「けれども其の一種の性格が僕等の特長《とくてう》なんぢやないか。此の性格が失《うしな》われた時は、即《すなわ》ち僕は亡《ほろ》びたのだ。然うしたら社會の人として、或《あるひ》は安楽《あんらく》な生活《せいくわつ》を爲《な》し得《う》るかも知れない。併《しか》し精神|的《てき》には、全《まつた》く死《し》んで了ツたのも同《おな》じことなんだ!」
「然うだ、其だから僕等の生涯は永久《えいきゆう》に暗黒だと云ふのだ!家庭《かてい》は人生《じんせい》の活動《くわつどう》の源《みなもと》である、と、人
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