《かんが》へたり言《い》ツたりするのであらう。
「躰?」と友は些《ちよ》ツと私の方《はう》を見て、「躰は無論《むろん》惡《わる》いさ。加此《それに》此《こ》の天氣《てんき》ぢやね。」
「矢張《やつぱり》惡いのか。そりや可《い》かんね。何ういふ風《ふう》に?……矢張|何時《いつ》ものやうに。」
「然う。まア、然うなんだらう、頭《あたま》が變《へん》にフラ/\するし、其に胸《むね》が何うも。」
「痛《いた》むのか。」
「あゝ。」
「そりや困《こま》るな。」
頭の所爲《せい》か天氣《てんき》の加減《かげん》か、何時もは随分《ずゐぶん》よく語《かた》る二人も、今日《けふ》は些ツとも話《はなし》が跳《はづ》まぬ。
「躰も無論惡いが」と暫らくして友は思出《おもひだ》したやうに、「それよりか、精神上《せいしんじよう》の打撃《だげき》はもツと/\胸に徹《こた》へるね。」
「……………」
「あゝ、僕あもう絶望《ぜつぼう》だよ!」投出《なげだ》すやうな調子《てうし》で友は云ツた。私の胸は鉛《なまり》のやうに重《おも》くなツた。
「曩《さき》の勞働者の唄ね、君《きみ》は何う思《おも》ふか知《し》らないけれど
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